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吉野大作 - あの町の灯りが見えるまで

あの町の灯りが見えるまで
  • 叫び声
  • いちばん寒かった日
  • 飲んだくれ女のブルース
  • 竜の女
  • あの町の灯りが見えるまで
  • 黒いブルドッグのブルース
  • 嵐の海に船を出そう
  • あんたの夢は
  • アンラッキー・ヤング・メン・ブルース
  • 光り輝く場所へ
  • 群青色の空から降下する落下傘の群れ
  • 過去の人  
  • Bonus Track
  • 叫び声(デモ・バージョン)
  • あの町の灯りが見えるまで(デモ・バージョン)
  • 不吉な風(吉野大作1966-69より)
  • 二人の愛(吉野大作1966-69より by ザ・ミッキーズ)

世間一般の知名度が高いアルバムと名作のアルバムとの違いは何だのだろうか。知名度が低いと隠れた名盤と一言で片付けてしまう。そういう意味では吉野大作氏の作品は隠れた名盤が多いのかもしれない。吉野大作=プロステという図式は正しいが、彼の音楽の一部に過ぎないことをこのアルバムは証明している。

シンプルなバンド編成での録音ではあるが、大部分のリードギターを除いた弦楽器のほとんどは吉野大作本人の演奏と思われる。そしてソロアルバムとしては4枚目となる。しかし前作の「永遠の雨」はプロデュースを自身で行っていないため、実質は「ランプ製造工場」以来の3枚目と言えるのではないだろうか。

最近のライブでの演奏と同様に、1960〜1970年代のロック・フォークのフォーマットであるが、そこは吉野大作。非常にバラエティに富んだ曲が詰められたアルバムだ。ライナーノーツにあるように「死」がテーマのアルバムだ。そのため、今までに比べて、詩の内容はわかりやすいものとなっている。

波の音で始まり、ブルースギターのイントロが流れ出す「叫び声」。シンプルなバンド編成と書いたが、あくまでメンバー的にであり、非常に凝ったアレンジである。これはアルバム全体に言える。この曲では少なくともギターは5本聴こえてくる。右から聴こえてくるオルガンも良いアクセントになっている。マーチ風のドラミングも単なるブルースに曲を終わらせていない。ハイライトはツインギターのソロと1本だけのギターソロだ。

「いちばん寒かった日」ではフォークロックだ。おそらくギターはすべて吉野大作氏によるものだろう。ボーカルとデュエットしているかのようなハーモニカが素晴らしい。サビででずっと吹かれていたハーモニカを外すことによって、サビの歌詞を強調させている。エンディングはBeatlesだろうか。

ライブではお馴染みの、そして待望の録音であろう「飲んだくれ女のブルース」。モデルになる女性がいるとか、いないとか、とライブのMCで話すことがあるが、それらしき女性と私は一度席を隣にしてライブを見たことがある。遅れてライブハウスに入ってきて、焼酎のボトルを注文し、ライブ後半には酔いつぶれて寝てしまっていた。歌詞にあるとおりの雰囲気を持った女性だった。そうそう、まだご存命です。

このアルバムでの特徴の一つは変則的なドラミングである。この「竜の女」もそうである。斉木一久氏によると思われる、リードギターも一筋縄ではいかない。予測不可能な曲進行とリードギターで、アルバムの中でアクセントとなっている曲である。

マンドリンが印象的な「あの町の灯りが見えるまで」は屈指の歌詞とメロディを持った名曲である。「町」がどこを指すのか。それは聴く人の解釈によるので、個人的な解釈は書かないが、複層構造かつ想像力を喚起する歌詞である。深みのあるヴォーカルも聴きものだ。とにかく素晴らしい。ライブではしばしば歌われていたが、このアルバムにて公式に発表されたことが非常にうれしい。

またまたブルースナンバーの「黒いブルドッグのブルース」。すこしアップテンポな分、Beatlesの"Hey Bulldog"をどうしても思い起こしてしまう。歌詞も強烈な皮肉となっている。

非常に重厚なメロディと演奏の「嵐の海に船を出そう」。ライブでは大げさな歌です、と照れて紹介することがある曲。おそらくこのアルバムのために書き下ろされた曲である。20才の時に感じる「人生・死」と60才に感じるそれと違うのであろう。今の吉野大作氏の決意表明の曲であると思っている。またそれがこのアルバム全体に雰囲気として流れている。だからこそ、「吉野大作の少年時代」と同様に「1960〜1970年代のロック・フォークのフォーマット」で作成されないと意味を成さなかったと思う。

重厚な曲から一転、シャッフルのリズムで歌われる「あんたの夢」。これまで目立たなかったピアノ、オルガンが大活躍である。おそらくキーボードも吉野大作氏による演奏と思われる。

SEが多いのもこのアルバムの特徴である。「アンラッキー・ヤング・マン・ブルース」も車の走行音から始まる。ドライブ感いっぱいのギターに導かれて、曲が始まる。ファンの方はご存知だと思うが、吉野大作氏が作るメロディはわかりやすいものが多い。しかしここでは、音が外れたようなメロディが歌われている。また珍しくコーラスも入っている。プロデューサーとしても素晴らしいのだろう。曲をどうすれば魅力的なものに出来るのか、その選択が素晴らしい。

「1973-1980」に未発表曲として収録され、ライブでも良く演奏されいてる「光り輝く場所へ」。個人的に大好きな曲だったので、収録は非常にうれしかった。ここでも一筋縄ではいかないドラミングでアクセントをつけ、非常にポップだったメロディに変化をつけている。ライブや「1973-1980」で聴き慣れていたため、曲の変化に戸惑いはあったが、アルバムの中の1曲として収まりの良いアレンジとなっている。

ギター2本とピアノによる「群青色の空から降下する落下傘の群れ」。計算された不協和音が心地よい。

前作に収録しようとしたら、プロデューサーに反対されたという「過去の人」。たしかに前作には合わないかと。ライブでも定番でギターでの弾き語りという形式も変わらない。違う点はご息女のコーラスが入るところと、エンディングにハープシコード、オルガン、笑い声が入るところ。

SEで始まり、不気味な音で終了する。歌詞だけではなく、トータルアルバムとしてもまとまっている。隠れた名盤として少数の人の中だけに知られるには、すばらしすぎる名作である。

BonusTrackとして、「叫び声」、「あの町の灯りが見えるまで」のデモ音源、「吉野大作1966-1969」から2曲が収録されている。デモ音源については正式録音盤と聴き比べて楽しむこととして、「吉野大作1966-1969」から2曲については「ハイ・スクール・デイズ vol.1」「ハイ・スクール・デイズ vol.2」にて記したい。この2枚からの音源は収録時間の関係で大部分が「吉野大作の少年時代」のDeluxeEditionのBonus Trackに収録されている。

「吉野大作1966-1969」が2枚のアルバムに別れて収録されてしまったことが、非常に残念だ。本音を言えば、デモ音源も別ディスクに収録して欲しかった。しかし、CDというフォーマットが無くなりつつある今となっては、このような願いは意味をなさないのだろう。

関係音源

「1973-1980」
1973-1980

"光り輝く場所へ"のオリジナルバージョンが収録。



「ハイ・スクール・デイズ vol.1」
ハイ・スクール・デイズ_vol1

"二人の愛"の再録バージョンが収録。


「ハイ・スクール・デイズ vol.2」
ハイ・スクール・デイズ_vol2

"不吉な風"の再録バージョンが収録。

「吉野大作の少年時代 - DeluxeEdition」、「あの町の灯りが見えるまで」にボーナストラックとして収録された、1966年から1969年時の作品の再録音(1990年台前半)。本人作成のCD-Rで一部ボーナストラックに未収録の曲が含まれている。極少数のみ作成されたと思われる。

発売によせて   2012年02月12日 記 (一部改)

2005年の「ETERNAL RAIN-永遠の雨-」以来の7年ぶりのアルバムです。その間には活発なライブ活動も行っていたし、カバーアルバムも録音済み、のような話もされていたので、あまり発売間隔が空いたという気はしません。

しかし待望の、本当に待望のニューアルバム。新録というのはいつでも格別な音楽です。 吉野大作は時代にそって音楽を作り続けてきています。その時代の現実を見事に切り取った音楽です。様々な曲調を持ってアルバムを作成しており、それが故に彼を一言で表しがたく、そのアルバムごとにファンがいると言っていいと思います。

そんな彼が作成したニューアルバムは、ここ数年の弾き語り中心のライブを彷彿とさせるシンプルなバンド編成でのロックでした。いったい今は何年なんだいと呟きたくなるほど、40年以上も前の音が聞こえてきます。それは時代遅れの音楽と言うことでは無く、吉野大作にとって2012年という現代の表すための音なのだと思います。

セルフカバーや、ずいぶんと前に書かれた曲、そして最近作られた曲。それらが違和感なくアルバムに収められていることを思うと、吉野大作の時代に対しての姿勢は変わらないとういことなのでしょうか。

そのため、今までの集大成としてこのアルバムを作成したような気がしています。そして今までのベストと言える素晴らしいアルバムに仕上がっています。

1993年に彼の音楽を知ってからすでに20年。すでに私が知らない吉野大作の1970〜1980年と同じくらいの期間、彼のファンでいることになります。時が経つ速さを実感します。それほど長い時間、立ち止まること無く音楽を続ける強さはどこから来るのか。いつか尋ねてみたいです。



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